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2024/10/15

中小企業のための1on1導入ガイド|組織で成果を出す1on1の意味や目的、効果と導入手順などわかりやすく解説

1on1とは

1on1とは、
上司と部下が人間関係を築きながら成果をあげる全体のプロセス
を表す言葉です。

1on1というと、一般的に上司と部下の1対1の面談をイメージしますが、
面談以外の時間も1on1に含まれます。

1on1は、1on1ミーティング
1on1ミーティング以外の場(以下「場外」)に分かれます。

米国のシリコンバレーのベンチャー企業などでは、当たり前の習慣として実施されてきた1on1 ですが、近年では、ヤフー株式会社などの国内の有名企業が取り組んでいることで、日本においても100名以上の企業の70%以上の企業が導入しています。

 

1on1ミーティング

1on1ミーティングとは、
上司が部下の育成やモチベーション向上を目的として、定期的・継続的に行う個人面談です。

部下の育成が目的であるため、1on1ミーティングは部下のための時間です。

そのため、上司がテーマや解決策を決めるのでなく、
部下がミーティングで話す内容や問題解決策を決定し、行動に移します。

正解がない現代のビジネス環境においても、
対話によって上司と部下がともに最適解を見出すことができるため、課題解決力が向上し、生産性があがります。

1回の時間は30分~1時間で、月に1回~2回行うことが推奨されますが、
部下の成長段階や上司の業務負荷どを考えて全体の設計を行います。

 

ミーティング以外の場(場外)

場外とは面談以外の場のことで、
上司が部下の成長や信頼関係を醸成するための日常的な関わりのことです。

挨拶や雑談をするようなタイミングで部下の話を聴くことで、
部下との信頼関係を深めるとともに、部下の目標達成や成長を支援します。

 

1on1ミーティングとその他の面談の違い

評価面談との違い

評価面談は、上司と部下が定期的に行う面談で、一般的に人事評価面談とも呼ばれます。

評価面談は、上司が部下の成果や成長を確認し、評価を伝えるために行います。

面談を通じて、部下に評価を納得してもらい、次年度以降の目標を設定します。

面談は年に1~2回、1時間程度の頻度で行うため、面談を通じて部下の成長を促すという機能は果たしません。

 

メンタリング面談との違い

メンタリングとは、先輩社員が後輩社員を指導する1対1の面談です。

メンタリングの特徴として、
部下を直接評価している上司は指導役にならない点が挙げられます。

メンタリングは新卒社員を中心とした若手の離職防止を目的として行われるため、
仕事や人間関係の悩みといったメンタル面のサポートが重視され、
業務目標の達成や組織で成果を出すといったことは求められません。

面談は通常1カ月に1回、1時間程度行います。

 

社外コーチのセッションとの違い

社内の上司は、部下の成長に導くチャレンジができるような業務のアサインを行うことができます。
1on1を通じて業務の遂行や成長に必要な接点をもつことで、部下の成長を支援します。

一方で、社外コーチのセッションも社員の成長のために行われますが、
業務のアサインや、面談以外の場で細やかな支援ができないという点が異なります。

 

1on1の導入が広がっている背景

1on1という経営手段が生まれた背景には、従来のトップダウン型のマネジメントの限界が影響しています。

20世紀中盤から後半にかけての大量生産・大量消費の時代には、
トップダウン型のマネジメントで成果をあげることができました。

しかし、経済の国際化や技術革新が進むにつれ、
複雑で変化の速いビジネス環境に対応するためには、
現場の意見やニーズを素早く把握し、柔軟な対応が求められるようになりました。

そういったビジネス環境の変化の中で、
シリコンバレーのスタートアップやIT企業で、個々の社員との対話を重視する1on1という手法が普及し始めました。

特にGoogleやFacebookなどの企業が、社員のエンゲージメントや成長を促すために取り入れたことで、注目を集めるようになりました。

1on1は、社員と上司が定期的にキャリア目標や抱えている問題について対話することで、
組織全体のコミュニケーションの質を向上させ、社員のモチベーションや生産性を高める手段として評価されています。

こうした背景から、1on1は現代の多様な働き方に適応する経営手法として広まってきました。

日本の中小企業も、働く人材が減少していくなかで社員の定着率を高めるために、上司と部下のコミュニケーションの質を上げる必要性が高まっています。

急激なビジネス環境の変化の中で、部下を成長させることで成果をあげる1on1の導入が進んでいます。

 

1on1導入の目的

1on1は、上司と部下との信頼関係を高め、部下の成長を促進して組織で成果をあげるために導入されます。

日本の導入企業に対する調査からは、

・社員の主体性・自立性の向上
・自立的キャリア形成の支援
・エンゲージメントの向上と離職率の低下

といったことを目的として導入されていることがわかります。

 

経験学習の促進

部下の成長を促進して、組織で成果をあげていくためには、経験学習サイクルを促進する必要があります。

人は70%を仕事上の経験から学び、20%を上司からのアドバイス、10%を研修や書籍などから学ぶといわれています。

経験による学びを促進するメカニズムとして、
ディビット・コルブの「経験学習モデル理論」が有名です。

部下の失敗や成功体験をそのままにせず、
上司が1on1ミーティングで部下から教訓を引き出し、
経験学習サイクルをまわしていくことで、
部下の成長を促進させながら、組織の実際の課題解決を同時進行で行います。

つまり、1on1は経験学習を促進して部下を成長させ、
社員定着率や組織パフォーマンスの向上を通じて、
成果を上げる組織をつくるために行います。

経験学習サイクルの図

 

1on1導入の効果

1on1には、一般的に次の効果があると言われています。

社員の成長

企業に属する社員は、それぞれが異なる背景やニーズを持ってますが、
1on1で上司が個々の社員と継続的に接することで、個々の状況に合ったスキルアップやキャリア成長をサポートできます。

社員は自分の成長や目標に向けた振り返りや上司からのフィードバックを受けとり、
自分で決めて仕事を行うようになるため、成長と成果を最大限引き出すことができます。

 

問題の早期発見と解決

1on1では、個々の社員の業績や目標に対する進捗を確認し、改善すべき点をフィードバックします。

社員の課題や問題を早期に把握できるため、トラブルが大きくなる前に対処できます。

1on1の双方向のコミュニケーションによって、上司と部下でともに最適解を見出すことができるようになり、問題解決力が向上します。

これにより、部下の個別の問題が全体の業績に悪影響を与えるリスクが軽減され、組織全体の生産性が向上します。

 

エンゲージメントの向上

経営者やマネージャーが現場の社員と直接話す機会を作ることで、上司と部下のコミュニケーションが円滑になります。

1on1は、社員が自分の意見や不安を直接伝える場でもあります。

上司がこれに耳を傾け、適切な対応をすることで、
社員の会社へのエンゲージメント(関与度)が高まります。

これが定着率の向上や生産性の向上につながります。

 

1on1効果のグラフ

参照:【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査図表4・リクルートマネジメントソリューションズ

 

1on1を導入する際の課題と解決策

導入企業の調査からは、上司と部下との信頼関係が向上していることが分かります。

しかし、1on1本来の目的である、部下の成長と業績の向上にはつながっていません。

調査結果からは、
上司の面談スキルの不足と上司の負荷の高まり
という課題が浮き彫りになっています。

1on1課題の写真

参照:【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査図表6・リクルートマネジメントソリューションズ

 

上司のミーティングスキル不足

上司のミーティングスキルが不足していると、1on1の効果が十分得られません。
1on1がただの雑談の場となったり、上司が一方的に進捗を確認する場となってしまいます。

これでは、部下はいつまでたっても成長しません。

また、1on1研修を行っても、すぐに成果が出る上司と成果が出ない上司がいます。

成果を出せない上司は、上司が自分自身の強みや弱みを知らず、
また、部下の強みや弱みを知らないために、
部下との信頼関係の醸成や、適切なコミュニケーションが取ていません。

そんな状態で面談を行うと、部下は業務時間を削られるだけと感じてしまうため、
部下の成長を引き出せないばかりか、部下の満足度が低下します。

 

解決策

1on1を効果的に行うためには、学習の場と実践の機会が必要です。

特に中小企業では、
リーダーシップやコミュニケーションといったマネジメント研修が不足しています。

企業の状況に応じて、

・人の才能の違いや才能の活かし方
・傾聴や質問・フィードバックといったコーチングスキル
・企業目標を達成する適切な目標の立て方

といったマネジメント研修を実施しましょう。

1on1に必要なスキルの一覧表

研修で学んだことを、実践する機会を設けましょう。

良質なフィードバックができる人材のサポートがあると、学習の効果が高まります。

上司の負荷の高まり

1on1は週1回~月1回、1回30分~1時間の時間をかけて実施します。
また、実施するにあたって事前の準備も必要なため、業務時間を大きく圧迫します。
自らプレーヤーとして動く比率の多い上司にとっては、成果を上げるための時間が少なくなります。

「1on1に時間を取られて仕事ができない」
「1on1に意味を感じない」

1on1をうまく浸透させるためには、社内の心理的な抵抗をどう超えていくかが重要です。

 

解決策

上司が負担を感じるのは、1on1の効果が感じられないからです。
効果を感じてから始めるのであれば、最初に負担感を感じても実施・継続をします。

そのためには、まず経営者層がマネージャーに対して1on1を行い、
効果を感じてもらってから、全社に導入していくということです。

上司のミーティングスキルが不足していることもあり、
中小企業が一気に全社に1on1を導入するとうまくいかないことがあります。

新しいマネジメント業務の導入ですので、上司の経験学習サイクルを回しながら、
徐々にできるようになっていけば良いと会社が捉えることが重要です。

また、負荷を低減するという意味では、
1on1を効果的に管理し、支援するテンプレートやシステムの導入も効果的です。

自社の規模に合ったテンプレートやシステムの導入も検討しましょう。

 

適切な目標が立てられていない

1on1は、企業の目標を達成するために、
上司と部下で目標を設定し、その目標の達成を目指して行います。

しかし、そこで立てた目標が企業の目標とつながっていないと、
たとえ全員が目標達成しても企業の目標は達成されません。

経営者からすると、企業目標が達成できないと1on1の効果を感じません。

頑張っているのに、企業目標が達成できないため誰も報われない・・・
そんな1on1では、従業員満足度が低下します。

 

解決策

従業員全員の目標が、企業目標と繋がっている目標管理はOKRです。

1on1は、組織が目指す目標に向けて、目標達成や成長をしてもらうことを目指すため、そもそも目標が曖昧だと機能しません。

OKRは、企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることで、
すべての社員が同じ方向を向いて重要課題に取り組む目標管理制度です。

OKRでは、会社全体のカンパニーOKRから部門・部署、個人のOKRまでの「つながり」が明確です。

全社OKRが個人に共有されることで、会社目標と個人目標のベクトルがそろいます。

会社のビジョン実現に必要な一つの目標に、一人ひとりが集中して取り組むことにより、企業全体の目標を達成します。

ひとり一人は成長しているのに、企業目標が達成できない場合は、OKRの導入を検討しましょう。

OKRについて詳しくはこちらをご覧ください

 

1on1導入の流れ

1on1は以下の手順で導入します。

目的・目標を策定し、組織に共有する

何のために1on1を導入するのか、導入目的・目標を定めます。
経営者を中心に、導入目的や目標を何度も伝えます。

導入準備

1on1導入の全体スケジュールや具体的な展開方法を決定します。

また、アジェンダシートや振り返りシートなど、
1on1を効果的に行うためのテンプレートを準備します。

運用ツールを使う場合は運用ツールの選定も行っていきます。

社内に教育者を育成する場合は、準備期間に研修やトレーニングを行います。

管理職研修・実践

まずは、役員や管理職に向けて研修を行います。

3カ月間ほど相互トレーニングを行いながら、研修で学んだことを実践します。

 

全社展開

全社展開の準備ができたら、説明会を開催し、全社に展開します。

定期的に運用を評価し、改善を行います。

 

1on1ミーティングの流れ

部下の状態と目的の確認

まず、最近の部下の体調やワークライフバランスなどを確認し、
ミーティングの目的を説明します。

次に、前回から取り組んだことについて話し合います。
出来ていることについては承認のフィードバックを行います。

部下が安心感を抱くように、気軽な雰囲気づくりを心がけましょう。

 

テーマの確定

今回のミーティングで話し合うテーマを決めます。

1on1ミーティングで取り扱うテーマを上司が決めてはいけません。
部下の成長のために、部下自身がテーマを決めることに意味があります。

部下が何を話してよいか分からなければ、
以下のようなテーマについて話してみて、テーマを決めていきましょう。

・現在取り組んでいる仕事についての悩みや課題
・ワークライフバランスについて
・今後のキャリアや取り組んでいきたいこと。
・最近取り組んでいることで学んだことや気が付いたこと。

 

現状の把握

テーマが決まったら、上司はそのテーマについて部下の現状把握をします。

部下の話をジャッジせず、フラットな状態で傾聴しましょう。

部下の話をジャッジしてしまうと、部下の話を途中で遮ったり否定的な反応を示してしまいます。

双方向のコミュニケーションで、部下の気づきを引き出しましょう。

 

問題提起

現状が把握出来たら、目標に至らない理由を明確にします。

このときも、部下自身が問題点を見つけられるようサポートします。

部下が問題点を見つけられない場合や、上司の望む状態とギャップがある場合は、上司がどんな未来だったらよいか、いくつか提案したり、ギャップをフィードバックすることで、部下が考えやすくなったり、答えが出てくることがあります。

 

解決策の模索

その問題を解決するために、どのような解決策を取りえるか部下に考えてもらいます。

視点を変える質問で多くの案を考えてもらいながら、実行する解決策を決めていきます。

部下が解決策を見つけられない場合や、上司の望む成果とギャップがある場合は、上司がどんな未来だったらよいか、いくつか提案したり、ギャップをフィードバックすることで、部下が考えやすくなったり、正しい答えに導くことができます。

 

実行プランの策定

解決策が決まったら、次のミーティング期間までに実行することを具体化します。

解決策の実行が長期に渡る場合は、すぐできる実行プランに集中して取り組みます。

最後に、次の期間までどのようなサポートを希望するか確認し、部下を力づける声掛けを行って終わります。

 

日々の仕事の合間に進捗の確認

1on1は、上司と部下が人間関係を築きながら成果をあげる全体のプロセスです。

日々の仕事の合間にも、目標の進捗について声をかけ、信頼感を醸成しながら成果につなげましょう。

進捗がうまく行っていない場合は、15分ほどの1on1を行うことも有効です。

 

まとめ

1on1は、上司と部下が人間関係を築きながら成果をあげる全体のプロセスです。

従業員の成長や組織の成果に効果があるため、中小企業でも導入が進んでいます。

しかし、導入企業の調査からは十分な成果を引き出せていません。

中小企業のマネージャーのマネジメントスキル不足やマネジメントに集中できない状況が、1on1で成果を上げるうえでの課題です。

必要な研修や、システムの導入を通じて1on1を継続し、
部下の成長を促進させながら、組織の実際の課題を解決し、組織を成長させましょう。

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