中小企業におけるOKRの導入とその効果|OKRの中小企業への導入は山内経営会計事務所
OKRとは
OKRの基本概念
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
「達成目標(Objectives 以下O)」と
その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定して、
企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、
すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組みます。
OKRのObjectiveは、組織がどのような状態になっている必要があるのかを表したもので、
基本的には定性的な目標が推奨されています。
OKRでは、基本的に60%~70%の達成でよしとするチャレンジ目標を立てることが推奨されます。
このような目標を「ムーンショット目標」と言います。
Objectiveにどのように近づいているか、
という達成状況を測るための主要成果がKey Resultsです。
達成状況を測るための指標であるため、
Kは定量的なものとすることが推奨されます。
OKRは、会社の重要課題を解決する目標に全員で挑む取組ですが、
OKRイベントで頻繁にKRの達成度合いをチェック・修正するしくみを運用しながら、
組織全体の目標の達成と社員の成長を同時に目指す組織マネジメントです。
OKRの歴史と導入企業
目標管理の方法として、MBOやKPIなど様々な方法がありますが、
これらは主に現状の先にある未来を実現するのに適した目標管理制度です。
しかし、複雑で変化のスピードが早い現在では、
これまでの目標管理制度が上手く機能しないことが増えてきました。
そのような状況の中で創造性を発揮し、短期間で新しい変化を生み出す目標管理制度の必要性が生じてきたためにOKRが生まれました。
OKRは主要市場でライバル社に押され、存亡の危機にあったインテルで生まれました。
従業員の半分を動員したOKRで、
シェアを劇的に回復し、市場を制することができました。
当時インテルで働いていたジョン・ドーアが、
Googleに乞われてOKRの導入を行い、
以降、GoogleのマネジメントはOKRで行われています。
日本でも、メルカリ、ユーザーベース、日立製作所などがOKRを導入しています。
中小企業がOKRを導入するメリット
効果が出るスピードが速い
企業規模が大きくなると、
OKRの階層が5以上になったり、適切な目標を立てる難易度があがります。
一方で、中小企業では多くの場合OKRは3階層までです。
OKR設定や教育にかける時間も少なくて済むため、導入スピードは速くなります。
また、これまでマネジメントに取組んでこなかった企業では、
OKRに取り組むことで大きな成果が上がることが期待されます。
目標を起点にビジョンが浸透する
OKRでは、会社のビジョンに対する現状の課題を解決する目標を設定します。
個人の目標も、会社のミッションやビジョンに紐づけて設定するため、
結果としてビジョンが浸透します。
中小企業では、
そもそも仕事の目標が共有されていることも多くないため、
チームで適切な目標を設定し、共有することが、競争力の強化につながります。
部門間が協力しやすくなる
OKRは、会社のビジョンに紐づいた目標を、社員全員が共有するしくみです。
OKRを導入すると、会社全体の目標の達成に向かって、
自分の部署だけでなく、他の部署の目標も意識するようになります。
結果として、部門間協力が自然とできるようになります。
生産性の向上
中小企業では、全社員が共通の目標を追うというマネジメントを行っている企業は多くありません。
適切な目標に集中して仕事をすると、一人一人の生産性は向上します。
OKRを導入し、継続的に評価・運用を続けると、
PDCAサイクルが回るようになり、改善活動を通じて生産性が向上します。
社員育成ができる
OKRを導入すると、会社の目標達成に向けて、
従業員は普段はやらないことをやる必要に迫られます。
また、チームの目標や個人の目標が明確になるため、
各人に当事者意識が芽生えます。
当事者意識をもって、普段やらない新しいことに挑戦することが、
従業員の成長につながります。
管理職(リーダー)は、OKRの運用を通じてマネジメント能力が向上します。
中小企業のOKR導入事例
事例1:従業員が20名の建設業
OKRは2層目まで全従業員参加で作成。
2週間に1回、ウィンセッションとチェックインを併せたミーティングを開催。
ミーティングは、KRの進捗と達成したことを共有。
OKRオーナーが進捗や取り組みに対してフィードバックを行う。
事例2:従業員170名の食品・エネルギー関連事業
当初6カ月はOKRの知識を含めたマネジメント研修を行う。
全社~個人まで、5階層のOKRを設定。
運用は部門・各課で、運用しやすいように設計。
その過程で、不要な会議などはOKRイベントに統合した。
OKR設定のポイント
OKRでは、「達成目標(Objectives 以下O)」と
その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を3~5つ設定します。
会社全体のOKRを先に設定し、その後に部のOKR、課のOKRというようにツリー状に設定します。
中小企業では、一般的にOKRの設定は3層までです。
それぞれのOKRはつながっており、全体として全社OKRを実現できるような目標を設定します。
O(目標) 設定のポイント
まずは、目標を定めます。
OKRの目標は明確かつ定性的な目標であることが推奨されています。
定性的とは、数字では表せない理想の状態のこと。
できれば、メンバーがわくわくできるような表現になっていることが理想です。
また、少し達成が難しいくらいのムーンショット目標を設定することが推奨されています。
ムーンショット目標は60%~70%の達成が予想される少しチャレンジングな目標です。
ムーンショット目標を設定したほうが、メンバーのモチベーションが高まり、成果が上がることが分かっています。
KR(主要な結果)設定のポイント
Oが決まったら、KRを設定します。
KRは、Oの達成度合いを測るための定量的な指標です。
定量的とは、数字で表せる性質をもつ指標です。
1つのOに対して様々な視点から、そのOを達成するKRを3~5つ設定します。
KRはSMAREの法則を意識して設定しましょう。
OKRのSMART
SMARTの法則では、Aは達成可能な目標(Attainable)ですが、
OKRにおいては、AはAmbitiousに変更して設定することが推奨されます。
1.具体的であるか(Specific)
明確で、「5W1H」がクリアになっていること。
2.測定可能であるか(Measurable)
量で測れること。検証が可能であること。
検証可能であるからこそ、必要に応じて目標の修正が可能です。
3.野心的か(Ambitious)
60~70%達成で十分な、野心的な目標であること。
4.目的に沿っているか(Relevant)
戦略実現の目的に合った目標であること。
自分が所属する部署の目標、会社の戦略・方針に合っているかを確認します。
5.具体的な期間か(Time-bound)
達成期間が限定され、期間が決まっていること。
中小企業のOKR導入手順と必要な準備
初期準備と計画
初期準備
OKRは、会社のビジョンに合わせて個人目標を設定していくため、
会社のなかでミッション・ビジョン・バリューといった経営理念が共有されていないと、
全体として繋がった目標を立てることが難しくなります。
中小企業は経営理念をしっかり定めていない企業も多いため、OKR導入前に経営理念を策定しましょう。
また、何のためにOKRを導入するのかという目的が明確でないと、
下層に進むにつれて目標の粒度がバラバラになり、全体が繋がった目標を立てることが難しくなります。
全従業員に伝わるように、OKR導入目的を明確にしましょう。
また、OKR開始までにOKR運用マニュアルを作成しておくと、
初期からPDCAサイクルがまわるようになるため、OKRマニュアルを作成しましょう。
計画
まず、一部門だけ導入するのか、それとも全社で一気に導入するのか。
チームのOKRにとどめるのか、個人個人までOKRを設定するのか。
OKRの導入範囲を決定します。
次に、OKR推進チームを決定し、OKR推進チームがOKR導入計画を策定します。
また、OKR推進チームは、OKRマニュアルを作成します。
初めてのOKR設定
初めてOKRに取り組む場合は、
多くても2層目OKRまでの設定にとどめます。
目標管理に慣れていない中小企業では、
最初からOKRを全社へ展開することはあまりオススメできません。
限られた部署・メンバーがOKRパイロットチームとなって、
3か月間学びながら取り組んでみることが重要です。
まずは、まずは、経営トップが全社OKRを設定し
次にパイロットチームが2層目OKRの設定をします。
OKRの運用と評価
OKRの設定が終わったら、パイロットチームがOKRマニュアルに沿って運用を行います。
OKR推進チームは、パイロットチームのOKR運用を支援するとともに、定期的にフィードバックをもらい、その対応を決めていきます。
最初のOKR運用期間(3カ月)が終わったらOKR結果レビューを行います。
KRの達成度を確定して、目標との差を次のOKRに活かします。
また、OKR運用改善ミーティングでOKRの運用を振り返り、効果的な運営できるようOKR推進チームに報告します。
OKR推進チームは、パイロットチームからもたらされたフィードバックを活かしOKRマニュアルを改定していきます。
全社展開
OKRパイロットチームの経験を活かして、OKR運用イベントと既存の会議体との調整や統合を行います。
重複するイベントなどを無くして、無駄を省きます。
管理職がOKR運用イベントを効果的に運用できるよう、必要に応じて管理職マネジメント研修を行います。
全社展開の準備が整ったら、全社に向けてOKR導入の目的や、OKRの設定を行うキックオフイベントを行います。
運用イベントはチームの状況に合わせた形で行うことを許しながらも、必ず行うことを徹底します。
全社で運用記録を残すことで、少しずつ改善することを徹底します。
OKR導入の注意点
OKRは新しい組織マネジメントですので、導入時はうまくできないこともあります。
導入時に気を付けるポイントを紹介します。
目標が適切でない。
OKRが効果を発揮するためには、目標が組織全体で適切になっている必要があります。
しかし、日本の中小企業の中には、まだ目標管理を取り入れていない企業もあります。
そういった企業では、どのような目標を立てれば良いか分からないという課題があります。
また、OKRを設定していくと、
・Oの設定は得意だけど、KRの設定が苦手な人。
・KRの設定は得意だけど、Oの設定が苦手な人
・全く目標が書けない人
など、すべての人が適切な目標を設定できる訳ではありません。
さらに、日本では目標達成率が100%であることが評価される傾向があります。
OKRは達成率が70%〜80%程度を前提とした挑戦的な目標設定を求めるのですが、
「達成できない目標」を掲げることに対する抵抗感から、失敗を恐れて挑戦的な目標を避ける傾向があります。
適切な目標を立てるには
うまく目標が立てられないのは、人にはそれぞれ強みに違いがあるからです。
強みに違いがあるので、全体として適切なOKRの設定はなかなかできません。
そういった場合は、チーム全体で強みを活かす必要があります。
チーム全体で目標を立てれば、より適切な目標が設定できるようになります。
チームの強みの活かし方はこちらもご覧ください。
挑戦的な目標を立てることに対して抵抗感を感じるメンバーが多い場合は、
まずは必達目標を掲げることも考えましょう。
OKRが漠然としていたり、
全社OKRに対して適切でない部門等OKRも散見されます。
そういった場合は、そのチームの上層のチームや、
他の部署のOKRを見たり、相談しながら、
タテ・ヨコから見て適切な目標を立てましょう。
社内コミュニケーションの改善
OKRは、組織マネジメントのフレームワークです。
OKRを機能させるためには、フレームワークの教科書通りに運用する必要がありますが、
今まで1on1や、チームミーティングといった、
マネジメントに必要なコミュニケーションができていない場合には、
コミュニケーションの質・量の両面で改善が必要です。
コミュニケーションを改善させるには
OKRをうまく機能させるためには、
すべてのリーダーにポジティブアプローチの意識や、
コーチング、ティーチングのスキルが必要です。
スキルが身についていない場合は、
社内研修などを行って、OKRに必要なコミュニケーションスキルを身につけましょう。
継続的な改善
OKRは、日本人にとって新たなマネジメントです。
中小企業が初めからOKRをうまく設定して、完璧に運用できることはありません。
目標の設定やコミュニケーションだけでなく、
運用方法も新たに設計していかねばなりません。
継続的にOKRの改善を行いましょう。
継続な改善を行うには
OKR運用イベントの運用改善ミーティングやOKR評価レビューを必ず行いましょう。
効果的にOKRを運用しているチームのやり方などを全社に共有するなど、自社に合った運用へと改善していきましょう。
人事評価との関係
OKRはチャレンジ目標を推奨しているため、
既存の目標管理・評価制度と結合させようとするとOKRの効果を十分に発揮できません。
そのため、OKRを人事評価と密に結合させないことが推奨されます。
しかし、OKRを一部人事評価の評価対象としている企業もあります。
OKRを人事評価に反映している企業例
中小企業でOKRを人事評価に影響させている企業は稀ですが、OKRを人事評価に一部反映している企業を紹介します。
・マネーフォワード
事業目標に基づく予算目標は100%達成を求めるが、100%達成を前提としないムーンショット目標の設定を織り交ぜて設定しています。
目標達成度そのものではなく、目標に対するアウトプット内容を人事評価の検討材料に加えています。
・ユーザーベース
70%の達成でも許容する「ストレッチ目標」と100%の達成が求められる「コミットメント目標」のどちらかをチーム内で合意し、選択して目標を設定しています。
ジョブ型雇用を採用しており、OKRの達成度はジョブグレードの決定に影響を及ぼしているが、OKRの達成度が処遇のすべてを決定しているわけではない。
まとめ
OKRは、企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、
すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組む組織マネジメントです。
中小企業のOKR導入には様々なメリットがありますが、中小企業に導入するにはリソース不足を始めとする様々な課題もあります。
正しいOKRの設定ポイントや導入手順を守りながら、注意点を意識してOKRの導入を進めましょう。
心理的安全性の高め方|具体的な取組みや注意するポイントを解説します。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、
ハーバード大学で組織行動学を研究する
エイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した
「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」の日本語訳です。
エドモンドソン教授は、この心理的安全性を
「チームメンバーが恐怖や不安を感じずに自由に発言したり、行動できる状態」
と定義しています。
心理的安全性が高い組織では、
安心して発言できる文化が出来ているため、
現場の問題解決力が高くなり、
チームの生産性が高まります。
心理的安全性が注目されるようになったのは
次の二つの理由があります。
心理的安全性が注目される背景
心理的安全性が求められる時代背景
現代の経営をとりまく外部環境は、
俗にVUCAの時代と言われるように
時代の変化のスピードが速く、
ものごとが複雑で不確実な時代です。
また、内部環境も、
グローバル化の進展で
様々な国籍や文化の人と働く機会が多くなっています。
さらに、
Z世代と旧世代の価値観の違いが浮き彫りになり、
コロナ禍以降のテレワークの対応など
これまで日本で成功してきたコミュニケーションでは
成果を上げることが難しくなっています。
Google社の研究発表
心理的安全性が注目されるきっかけとなったのが、
Googleが、パフォーマンスの高いチームについて、
「プロジェクト・アリストテレス」という研究を行い、
その結果が大々的に報道されたことです。
Googleの研究により、
高いパフォーマンスを発揮しているチームは
以下の5つの要件を
満たしていることが報告されたのです。
①心理的安全性
「無知、無能、ネガティブ、邪魔だ
と思われる可能性のある行動をしても、
このチームなら大丈夫だ」と信じられる状態https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#identify-dynamics-of-effective-teams
変わったアイデアも否定されることがなく、
失敗があった場合でも建設的に乗り越えられる。
②相互信頼
メンバーの能力を信頼している状態
そのため、問題が起きたときは
「ヒト」ではなく「しくみ」を責める。
③構造と明確さ
会社の目標から求められる
チームの目的・目標・計画が明確で、
個人の役割がチーム内で共有されている。
④仕事の意味
メンバーが、
自分にとって意味がある仕事を
選択できていると感じている。
⑤インパクト
会社の目標や社会に対して、
意義のある仕事をしていると思える。
実感を得るためには、
自分の仕事が組織の目標達成に貢献していることを、
把握できるしくみが必要。
最終的にプロジェクト・アリストテレスは、
上記5つの要因が機能する土台となるのが、
①の心理的安全性であると結論付けました。
因みに、アリストテレスは、
古代ギリシャの哲学者で、
「全体は部分の総和に勝る」
という言葉を遺しています。
Googleは、
「仕事はチームでしたほうがパフォーマンスが高い」
と考えている様子がうかがえます。
この研究報告が知れ渡るにつれ、
心理的安全性が
多くの企業から注目されるようになりました。
日本で心理的安全性が課題となる理由
日本人の性質
心理的安全性はアメリカ発の概念であり、
これからの時代に目指すべき組織概念です。
しかし、
この概念をそのまま日本で導入しても
うまく行かないことがあります。
日本は一般的に
同調圧力の高い社会性を有していると言われます。
義務教育段階から、
集団行動を取る訓練を積み重ね、
協調できない子は問題児扱いされてきました。
すこし前にはKY(空気読めない)
という言葉が流行語になったこともあります。
日本では、
全てを表現せず、
奥ゆかしさを残した所作が美しいとされてきたこともあり、
相手の気持ちを推し量ったり、
周りと異なった行動をしないことが重視されてきました。
組織においてもそれは同じで、
「あうんの呼吸」や
「出る杭は打たれる」という言葉が象徴するように、
同調圧力からはみ出るような言動は、
組織のなかでは敬遠されてきました。
組織の心理的安全性を高めるためには、
「出る杭がどんどん出る」組織文化を育む必要があります。
そのために重要なのが、
個人の才能の違いを正しく把握することです。
才能の違いを正しく把握するためには、
特性診断を行う必要があるのですが、
日本の組織では、
特性診断を行っているのは、
大企業を中心に一部の企業に限られています。
心理的安全性を高めに行くから上手くいかない
心理的安全性は概念的なものであるため、
具体的に何から取りかかれば良いか分からない。
という難しさがあります。
そもそも、心理的安全性が高い組織というと、
仲が良いチームと誤解されることが良くあります。
チームで仕事をする上で
相手との信頼関係を損なわないことは重要ですが、
心理的安全性を誤解している「快適なチーム」では、
お互いの顔色をうかがって失敗やミスがあっても指摘せず、
重要な会議でも発言しない(出る杭にならない)
といったことが起こります。
そういった組織文化を持つ企業は、
時代の変化に対応できずに、
徐々に衰退していきます。
なぜ心理的安全性を高めるかといえば
変化の速い時代の中で企業が成長していくために、
現場の生産性を高めるためです。
現場の生産性を高めるためには、
現場に高い目標や、
その目標を実現する責任を課す必要があります。
チームのメンバーの目標や役割が明確になっており、
チームの目標を達成するために、
言うべきことを言うから、
否定も排除もされないのです。
次に、
心理的安全性が概念的なものであるがゆえに、
具体的に何から手をつけたら良いか分からない
という難しさがあります。
高い目標を達成するためには、
会社全体の目標に対するチームの役割や目標が明確で、
チームのメンバーがお互いを信頼して仕事を任せる必要があります。
また、高い目標を目指せば自ずと、
仕事に対する意義を感じることができます。
仕事に求める欲求は人それぞれですが、
それぞれの違いを認める組織でなければ人は辞めていきます。
これらの因子のベースとなると言われているのが、
心理的安全性という概念です。
心理的安全性を高めるポイント
心理的安全性を高めるうえで着目すべきは、
効果的なチームの5因子がどのレベルにあるか?
を診ることです。
前述のとおり心理的安全性は、
効果的なチームの他の4因子の必要十分条件です。
逆説的に捉えると、
他の4因子が高いレベルにあれば、
心理的安全性も高いレベルにあると言えます。
心理的安全性という概念を高めようとすると、
何から手をつければよいか分かりにくいですが、
他の4つの因子を高めるための施策であれば、
具体的な取り組みが見えてきます。
心理的安全性を高めるためには、
会社の掲げる高い目標を実現するために、
4つの因子のうち弱いものから順に強化し、
4つの因子すべてを上げていく取り組みが必要です。
心理的安全性を高めるための具体的な取組み
Googleが心理的安全性を高めるために取組んでいること。
Google社では、最高の上司を、
「自分で成果を上げるのではなく、
部下が最大の成果を上げるための場づくりができる人材」
と定めています。
そのような上司をつくるために、
次のようなしくみを導入しています。
・独自の組織サーベイを行う
・パフォーマンスを最大限発揮させるために個人診断を行う。
・会社のビジョンや目標と個人を紐づけるOKRを行う
・上司と部下の相互信頼を高める1on1を行う
・賞賛しあう文化をつくるピア・ボーナスを行う
そのしくみの具体的な内容や、
実現を手助けするツールを紹介します。
定期的に組織サーベイを行う
組織サーベイとは、
組織の現状を全体的に把握する広範囲の調査です。
組織サーベイを行って、
相互信頼・構造の明確さ・仕事の意義・インパクトの
4因子のうち弱いものを把握し、
弱いものから改善する取り組みを行っていけば
心理的安全性は高まっていきます。
エドモンドソン教授の質問で調べる
心理的安全性の生みの親であるエドモンドソン教授は、
チームの心理的安全性のレベルを図る7つの質問を考案し、
論文で発表しています。
以下の質問に5段階で点数をつけて、
組織の心理的安全性のレベルを継続的に計測し、
チームの心理的安全性が高まっているかを調べましょう。
1. このチームの中でミスをしたら、たいてい非難される。
2. このチームでは、メンバーがいつでも課題や問題を指摘しあえる。
3. このチームのメンバーは、自分と異なる考え方ややり方を認めない。
4. このチームでは、安心してリスクを取りチャレンジすることができる。
5. このチームでは、他者に助けや支援を求めにくい。
6. このチームには、自分の努力や成果を故意におとしめるような人はいない。
7. このチームで仕事をするとき、
自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
Googleでは、
専属のリサーチチームが、
リーダーに対して匿名化した集計結果を渡し、
心理的安全性を高めるためのヒントを提供しています。
組織診断「ソコアゲ」で調べる
Googleでは、
心理的安全性の向上の責任を負うのは、
それぞれのチームのリーダーであることがうかがえます。
一方で、一般的な中小企業では、
どこにどのような打ち手をうてば、
心理的安全性に関する課題を解決できるかの
具体的解決策を示せるリーダーは多くありません。
通常の組織サーベイでは、
組織の課題を把握するために行いますが、
その原因や解決方法まで特定できません。
私たちが提供する組織診断「ソコアゲ」は、
「いつ」「どの順番で」「どこの部署に」
「どのような打ち手」を打てば課題が解決できるのか?
を調べることが可能な組織診断です。
組織診断「ソコアゲ」について詳しくはこちら
組織診断「ソコアゲ」で、
定期的に組織の状態を把握し、
そのタイミングに必要な打ち手をうちましょう。
個人の強みを診断し、チームで共有する
日本で心理的安全性が高まらないのは、
個人の特性を正しく把握しないからです。
孫子も
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
「敵を知らずとも、己を知れば勝負は五分五分」
「敵を知らず、己も知らざれば、戦うごとに必ず危うし」
と言っています。
日本の組織は「毎戦必ず危し」の状態で戦っているのです。
一方、欧米の組織では、
診断により個人の特性を把握することは、
当たり前のように行われています。
当たり前すぎるがゆえに、
海外の組織マネジメントが紹介されるときに、
その取り組みが紹介されていません。
人と人の違いを正しく分かりあえば、
なぜ自分と違う発言をするかの理由が分かります。
人と人の違いを共有して初めて、
メンバーに「相互信頼」が生まれて、
言いたいことを安心して言える文化が育まれるのです。
また、高いパフォーマンスを発揮するためには、
なるべく得意な仕事を任せる必要があります。
得意なことを任せられていると感じられることで、
チームのメンバーは、
「仕事の意味」や「インパクト」を感じることができます。
私たちは、
チームで人と人の違いを把握するのに、
「効き脳診断」という診断を活用しています。
効き脳診断のベースとなっているハーマン・モデルは、
50を超える博士論文でその有効性が確認されています。
ハーマンモデルは欧米の企業を中心に、
すでに200 万人以上の活用実績がありますが、
企業の現場では、
・コミュニケーションの促進・向上
・チームビルディング(創造性開発)
・採用や適材配置
・個人のスキルアップやキャリア開発
・顧客への提案力(営業力)強化
といった目的で活用されています。
効き脳診断についてはこちらもご覧ください。
OKRを導入する
OKRとは、
「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」
の略称です。
人の特性がそれぞれ違うため、
各自がそれぞれの価値観で発言をしたら、
誰かが我慢をする状況が生まれます。
それは、
言いたいことを言い合える状態ではありません。
組織の「目標と計画や、
その中で果たすべき役割が明確」になって、
組織の中に議論の基準ができるのです。
OKRは、
組織のビジョンや目的・目標と、
個人の目標を繋げる組織マネジメントです。
組織のビジョンや目標をベースに対話をするから、
意見が異なる人々がそれぞれの意見をぶつけ合っても、
我慢や否定が起こらないのです。
また、
OKRでは挑戦的な目標を掲げることが推奨されています。
挑戦的な目標に挑むことは、
「失敗を許容する文化」をつくり
メンバーが「自分の仕事に意義がある」
と感じることにつながります。
OKRについて詳しくはこちらもご覧ください。
OKRで必要なコミュニケーションを取る
OKRは、
メンバー1人1人の目標を、
組織のビジョンや目標と紐づけ、
それを組織で実現する組織マネジメントです。
組織で目標を実現するために、
OKRでは次のことに取り組みます。
1on1に取組む
Googleでは、
1on1を2週間に1回行っているようです。
2週間に1回
その期間の業務の振り返りを行い、
次の期間の目標とアクションの確認を行います。
1on1は、
上司が部下の育成や、
モチベーション向上を目的として、
定期的・継続的に行う個人面談です。
1on1という仕組みを継続的に運用することで、
上司と部下の信頼関係を築きながら、
部下が成長して成果を上げることを支援します。
1on1についてくわしくはこちら
コーチングの技術を教育する
人と人は違うので、
それぞれコミュニケーションスタイルが異なります。
それらのメンバーが集まって、
成果を上げるコミュニケーションを取るためには、
共通のコミュニケーションの型を身につける必要があります。
1on1を運用するのに必要なコミュニケーションの型が、
コーチングの技術です。
「お互いが言いたいことを言い合える関係性を築く」
ために学ぶべきコーチングの技術としては、
・傾聴
・承認
・GLOWモデル
・フィードバック
・アサーション
などが挙げられます。
ウィンセッションなどを行う
ウィンセッションは、
OKRのチーム内で成果を確認するだけでなく、
感謝やポジティブな感情を共有して一体感を高めるとともに、
失敗や発見をシェアして、
メンバーの成長を促すOKRイベントです。
一週間の成果や学んだことを言語化することで、
メンバーの成長を支援し、
その過程や努力もねぎらうことで、
「相互信頼」や「仕事の意義」への理解を深めます。
ウィンセッションは、
チームにおいて成果を確認し、
お互いを賞賛するイベントであるが、
チームを超えて感謝の言葉を伝えることができません。
チームや部門を超えて、
感謝の言葉を伝えるために、
Googleではピア・ボーナスを導入しています。
心理的安全性を高める取組の効果
心理的安全性が高まると、
次のような効果が期待できるため、
メンバーの創造的な協業が促進され、
組織のパフォーマンスが向上します。
ミスへの寛容性が高まる
特性診断で各自の得意なこと・苦手なことが分かると、
他者の失敗に対して寛容になります。
また、
OKRが推奨する挑戦的な目標に挑めば、
もともと失敗を織り込んでいるため、
失敗よりも挑戦が賞賛されるとともに、
目標を達成するば大きな成果が得られます。
心理的安全性が高まれば、
離職率が低下し、
高い組織パフォーマンスを維持することができます。
コミュニケーションの改善
人と人の違いを理解していると、
発言の違いが起こる理由が分かるため、
意見の対立は起こりにくくなります。
OKRでチームの目標や役割を共有すれば、
一貫性のあるコミュニケーションを取ることができます。
1on1で継続的に面談を行えば、
上司と部下の信頼関係が増し、
アサーティブな対話を行うことができます。
コーチングの技術を使って対話を行えば、
お互いの違いを活かして創造的な解決策が生まれます。
心理的安全性が高まると、
コミュニケーションの質が向上し、
現場の課題解決力が高まります。
創造性の促進
OKRは現状の延長線上にない、
挑戦的な目標を掲げるので、
創造的なイノベーションを促進する必要があります。
心理的安全性がある環境では、
メンバーは自由にアイデアを出し合うことができるので、
創造的なアイデアで課題を解決するようになります。
メンバーの成長と学習
OKRで高い目標に挑むために、
メンバーには成長が求められます。
継続的な1on1で、
上司は部下の成長と学習を支援します。
心理的安全性が高い環境では、
部下は安心して失敗し、
失敗から学んで成長する機会を得ます。
まとめ
心理的安全性とは、
チームメンバーが恐怖や不安を感じずに、
自由に発言したり、行動できる状態のことを言い、
Googleの調査で、
組織の生産性を高める重要な要素であると分かっています。
アメリカから入ってきた概念なので、
日本の組織で心理的安全性を高めるためには、
今までと異なったマネジメントを取り入れ、
新たに学習をする必要があります。
心理的安全性を高める取り組みを行って、
生産性の高いチームを作ることが、
不確実で変化の速い現代社会で企業が生き残るための
唯一の組織の方針であると言えます。