中小企業がOKR導入を成功させるためのチームビルディング具体例と実践方法
OKRとは
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
OKRでは、企業が目指すべきビジョンや目標と、社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、すべての社員が同じ方向を向いて重要課題に取り組みます。
OKRでは、「達成目標(Objectives 以下O)」と、Oの達成度をを測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を3~5つ設定します。
OKRの特徴は次の通りです。
・容易に達成できない高い目標(ムーンショット)の設定が推奨される。
・高頻度で進捗確認と評価を行う
・組織のビジョンや目標と、個人の目標を連動させることができる。
・目標の構造が明確で、全社で共有されるため、部署間や部署を超えた協力が得られやすくなる。
・目標が明確で、上司の支援を受けられるため、エンゲージメントが高まる。
OKRは、従業員のモチベーションを高め、高い目標を実現するための組織マネジメントです。
中小企業がOKRを導入するときの課題
OKRの理解不足
OKRの導入を急ぐと、OKRの概念や使い方について十分に理解していないまま導入を試みるます。
その場合、特に中小企業では、経営陣やチームリーダーが適切な目標設定に不慣れなことが多く、そのためにOKRが正しく運用されない可能性があります。
具体的な課題例
・目標(Objective)が抽象的過ぎて、共感を得られるものになっていない。
・成果指標(Key Results)が定量化されていない。
・チームや社員がOKRを「チェックリスト」と誤解して、OKRの効果が発揮されない。
既存の業務文化との衝突
中小企業では、従来の目標管理方法や上下関係が強い文化が根付いていることが多く、OKRのようなオープンで透明性の高い仕組みに適応しにくいことがあります。
また、社員がOKRを追加の仕事と感じ、不快感や抵抗感を示すこともあります。
具体的な課題例
・上司がトップダウンで目標を設定してしまうため、部下のやらされ感がすごい。
・上司がトップダウンで指示を出し、創造的なコミュニケーションが生まれない。
・目標がオープンにされることで、失敗を恐れて挑戦的な目標を立てない。
リソース不足
中小企業では、OKRの導入や運用に必要な時間や人員が限られている場合が多く、OKRの設定・運用が難しい面があります。
時間の不足
OKRを策定し、進捗をモニタリングするプロセスには時間と労力がかかるため、日々の業務との両立が難しくなることが多い。
そのため、OKR設定や進捗確認・評価のための時間を十分確保せず、OKRが形骸化することがあります。
マネジメントスキルの不足
中小企業では、マネジメントスキル研修に時間を割いている企業は多くありません。
OKR導入時にトレーニングを提供する人材が不足していると、導入初期に十分なトレーニングが提供されません。
そのため、OKR運用に必要なマネジメントスキルが不足し、OKRの達成が難しくなります。
OKR導入とチームビルディングの関係性
チームビルディングとは
チームビルディングとは、個性あふれる多様な人材が集まる組織において、それぞれの強みを最大限発揮し、経営目標を達成する組織づくりのための取組全般をいいます。
チームビルディングは、変化が速く、かつ複雑な現代のビジネス環境のなかで、企業がビジョンや経営目標を達成する組織をつくるために行われます。
私たちが、チームビルディングを行う上での土台としているのが、コーチングファームジャパンの石見幸三氏が提唱したチームビルディングSSR理論という考え方です。
チームビルディングSSR理論では、組織の力を「人材力/Strength」「組織力/Structure」「関係力/Relation」の3つの要素に分類しています。
それぞれの要素は、以下のように説明されます。
①人材力(強み/Strength)
メンバーの強みや思考・行動の特性を踏まえて、信頼感を醸成しながら適所適材やリーダーシップ発揮を考える力
②組織力(構造/Structure)
会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点をしっかりつくったうえで、一人ひとりが主体的に動き、かつチーム全体が一体となって相乗効果を生み出せるようにする力
③関係力(関係/Relation)
メンバーの創造的な対話により、やる気と能力を引き出し、チームを活性化する力
チームビルディングは、この3つの要素をバランス伸ばしていく取り組みです。
チームビルディングとOKRの関係
チームビルディングSSR理論の視点からは、OKRは組織力を高める取組です。
OKRで会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点を明確にすることで、組織全体のパフォーマンスが向上し、高い目標を達成します。
最強のチームビルディング式OKRでは、
高い目標を実現するために、個々の特性に応じた仕事のアサインをするなど、人材の強みを活かす取り組みを行います(人材力の向上)。
また、目標に対して継続的な測定や評価を行い、1on1を中心に、上司の支援のもと目標の達成を目指します(関係力の向上)。
OKR目標を掲げるだけでなく、OKRを成功に導く取組をしっかり行うと、結果としてと人材力・関係力も向上していきます。
中小企業のOKR導入を成功に導くチームビルディング具体例
人材力の取組
メンバー一人ひとりの才能や専門的技術をチームの中で活用する方法を身につけ、OKRの高い目標を達成できる組織をつくります。
思考特性診断(効き脳)
人の価値観や判断は、脳の思考特性に大きな影響を受けています。
同じ情報を受けても、受け手によってどのように受け止めるか異なります。
そのため、仕事や学習の得意・不得意も人によって異なります。
得意なこと(強み)は本人が当たり前に発揮しているため、当の本人はそれが強みであることに気づいていません。
思考特性の違いを理解することによって、一人ひとりの能力を十分引き出すことができます。
思考特性診断について詳しくはこちらも参照ください。
行動特性診断
例えば会議のときに、声が大きく話題をリードする人、意見はあるのに自ら発言しない人など、人の行動は「行動特性」に大きな影響を受けています。
行動特性の違いが分かれば、自分の行動を律することができるようになるとともに、チームで対処ができるようになり、チーム内の無駄な争いがなくなります。
チーム内の人材の行動特性を全員で共有することが、チームのパフォーマンス向上につながります。
スキルマップ作成
スキルマップを作成することにより、一人ひとりのスキルと成長を見える化します。
チームが成果を上げるために必要なスキルが不足している場合は、育成や外部からの補充で補います。
現在のスキルマップを基に、人材育成計画を作成し、OKR目標の達成につなげます。
組織力の取組
OKRそのものが組織力を高める取組ですが、OKRの成果をより高めるために、次のようなチームビルディングに取組みます。
経営理念策定
経営目標(OKR)は、経営理念を実現するための取組ですが、中小企業の中には経営理念を策定していない企業も多くみられます。
経営理念が定まると、メンバーの判断の基準が固まります。
一人ひとりの意見が異なったとき、判断の拠りどころとなるのが経営理念です。
OKRに取組むと、多くの場合経営理念の必要性に気づきます。
OKR運用イベントの実施
OKRには、週次・月次・3カ月ごとのOKR運用イベントが決まっています。
しかし、中小企業では時間のリソース不足により、OKR運用イベントがおろそかにされることがあり、そうするとOKRの成果が十分に発揮されません。
既存の会議イベントなどを見直して、OKR運用イベントを着実に実施します。
問題解決力向上研修
OKR運用イベントの中に、月次のコンフィデンスミーティングというイベントがあります。
高い目標に挑むOKRでは、KR担当リーダーの知識や経験では解決できない問題がたくさん生じます。
そのような問題をチームで解決するのが、コンフィデンスミーティングです。
中小企業では、チームの問題解決力を上げる研修を受ける機会は少ないので、問題解決の型を知らないことが多いです。
問題解決の型を学んで、チームの問題解決力を向上し、高い目標を実現するチームをつくります。
関係力の取組
信頼関係向上研修
チームの中に心理的安全性がなければ、思い切った発言はできません。
関係力向上は、お互いのことを知り、否定しない文化をつくっていくことから始めます。
チームメンバーの特性や価値観を共有し、信頼関係を醸成します。
コーチング研修
コーチングは、対話を通じて部下の能力や成長を引き出し、目標達成を支援するコミュニケーションです。
コーチングに必要な、傾聴・承認・質問といったスキルを学ぶとともに、実践を通じてコーチングを身につけます。
上司と部下の双方向コミュニケーションが、問題解決の質を高めます。
1on1導入
OKRは、3カ月ごとの高い目標に挑むため、コーチングに頼ったコミュニケーションではスピード感が不足します。
社員の成長を待っているだけでは、目標達成はおぼつきません。
目標を達成するための1on1では、
・目標を達成するための知識やスキルを教えるティーチング
・相手の価値観も受け止めるが、自分の考えも適切に伝えるアサーション
・特性診断に応じた個別対応
といったスキルが求められます。
部下の成長とOKR目標達成のバランスを見ながら、これらのスキルを使い分ける能力を養います。
1on1について詳しくはこちらもご覧ください。
中小企業での導入成功事例
事例1:従業員が20名の建設業
OKRは2層目まで全従業員参加で作成。
2週間に1回、ウィンセッションとチェックインを併せたミーティングを開催。
ミーティングでは、KRの進捗と達成したことを共有し、OKRオーナーが進捗や取り組みに対してフィードバックを行っている。
事例2:従業員170名の食品・エネルギー関連事業
当初6カ月はOKRの知識を含めたマネジメント研修を行う。
全社~個人まで、5階層のOKRを設定し、運用は部門・各課で、運用しやすいように設計し、OKR運用マニュアルを作成。
その過程で、不要な会議などはOKRイベントに統合することによって、運用イベントの着実な実施を支援した。
まとめ
高い目標の実現を目指すOKRでは、組織の多様な人材の強みを活用し、経営目標を達成する組織づくりの取組であるチームビルディングが必要です。
チームビルディングとは、組織の人材力・組織力・関係力を高めながら、組織のビジョンや目標を実現する力を高める取組のことをいいます。
OKR(目標管理)とは、チームビルディングのなかでは、組織力を高める取組と捉えることができます。
OKRの高い目標を達成するためには、メンバーの力を活かし、問題解決を行う双方向コミュニケーションが重要です。
OKRを設定したら、OKR達成のためにあわせてチームビルディングも行いましょう。
中小企業が成果につなげるチームビルディング:具体的な方法や効果、注意点を簡単に
チームビルディングとは
チームビルディングとは、個性あふれる多様な人材が集まる組織において、それぞれの強みを最大限発揮し、経営目標を達成する組織づくりのための取組全般をいいます。
チームビルディングは、変化が速くかつ複雑な現代のビジネス環境のなかで、企業がビジョンや経営目標を達成する組織をつくるために行われます。
チームビルディングの3要素
私たちが、チームビルディングを行う上での土台としているのが、コーチングファームジャパンの石見幸三氏が提唱したチームビルディングSSR理論という考え方です。
チームビルディングSSR理論では、組織の力を「人材力/Strength」「組織力/Structure」「関係力/Relation」の3つの要素に分類しています。
それぞれの要素は、以下のように説明されます。
①人材力(強み/Strength)
メンバーの強みや思考・行動の特性を踏まえて、信頼感を醸成しながら適所適材やリーダーシップ発揮を考える力
②組織力(構造/Structure)
会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点をしっかりつくったうえで、メンバー一人ひとりが主体的に動き、かつチーム全体が一体となって相乗効果を生み出せるようにする力
③関係力(関係/Relation)
メンバーの創造的な対話により、やる気と能力を引き出し、チームを活性化する力
チームビルディングは、この3つの要素をバランス伸ばしていく取り組みです。
チームビルディングが必要とされる背景
現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われています。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、社会やビジネス環境が複雑化し、将来の予測が困難な状況を意味します。
そのようなビジネス環境の中で、組織が直面する課題は複雑化し、簡単に解決することができなくなりました。
企業がビジョンや経営目標を実現するには、複雑に絡んだ問題を多角的に捉え、解決に導く力が組織に求められるようになりました。
組織に属するメンバ-それぞれの強みを最大限発揮し、課題を解決する組織を創るチームビルディングが求められています。
チームビルディングの効果
生産性の向上
企業規模が大きくなってくると、個々の役割やプロジェクトごとに情報が属人化するようになり、チーム内でのコミュニケーションが不足しがちです。
また、部門が異なると、部門ごとの目標やスケジュールの違いにより、部門間での意思疎通が不足していると部門間で対立が起こります。
チームビルディングにより、個人間、部門間の目標や情報が共有されることで、業務の進行スピードが向上するだけでなく、重複作業やミスが減少します。
また、メンバー各自の役割や進捗状況が分かりやすくなるため、効率的に仕事を進めるようになります。
チームビルディングに取組むと、個人がチームの中で自分の強みを活かし、他のメンバーの弱みを補うことを意識して働くようになります。
これらの効果から、組織全体の生産性が向上します。
従業員のエンゲージメントの向上
チームビルディングは、人の強みを活かす取り組みです。
調査から、組織が人の強みに着目するだけで、エンゲージメントが大幅に向上することが分かっています。
チームビルディングでコミュニケーションが改善すると、従業員は「自分の意見が尊重されている」と感じることができるため、会社に対する信頼や愛着が深まります。
チームビルディングによって、組織の目標のなかで個人の役割や責任が明確化されるので、「自分が組織の役に立っている」と感じることができるため、エンゲージメントが向上します。
リーダーシップ向上を通じたリーダーの育成
リーダーシップとは、組織の中でチームに与える影響力の強さのことです。
チームビルディングに取組むと、リーダーは自らの強みの活かし方を学び、自分の強みを活かして影響力を行使する力が高まります。
また、部下への仕事の任せ方や、部下の能力を引き出すコミュニケーションを身につけます。
結果として、その人の強みを活かしたマネジメント能力が高まり、リーダーを育成することができます。
中小企業がチームビルディングを行うための具体的な方法
チームビルディングを行うポイント
チームビルディングは、経営目標を達成する組織づくりを行うために行います。
チームビルディングというと、ワークショップなどの研修を意識すると思いますが、目的もなくワークショップを行ってもチームビルディングはできません。
チームの力のうち、どこが弱いのかを把握して、それを補う継続的な取り組みを行って初めて、経営目標を達成できる組織ができるのです。
チームビルディングSSR理論では、組織の力を「人材力/Strength」「組織力/Structure」「関係力/Relation」の3つの要素に分類し、この3つの要素をバランスよく満たしていくことが重要と考えています。
3つの要素には、それぞれレベルがあり、いきなり上位のレベルを満たしにいっても、土台がしっかりしていないため、その打ち手は効果がありません。
組織のレベルは、「個人」、「チーム」「会社全体」の階層レベルに区分され、それぞれが「人材力」「組織力」「関係力」と有機的に結びついており、それぞれの結びつきが強化されると組織の実力が上がっていくのです。
例えば、社員が会社の理念や仕事に意義を感じていても、社員同士が信頼できていなければ、離職の多い職場なのは変わりません。
中小企業では、学習の機会が限られているため、1階層の取組ができている企業も多くありません。
中小企業が成果を出す近道は、1階層から順に取り組んでいくことです。
中小企業がチームビルディングに取組むうえで、おすすめの取組を3つご紹介します。
何から始めて良いか分からない場合は、この3つの順で取り組みましょう。
人と人の違いを学び、強みを活かす方法を身につける(人材力)
調査会社ギャラップの調査によると、経営層が「強みに着目する」という意識を持つだけで、組織の生産性やエンゲージメントが向上することが分かっています。
近年、ダイバーシティ&インクルージョンという概念が広まっているのも、チームの生産性を上げるためには、メンバーの強みの違いを理解し、弱みを補いあえるような関係を築くことが重要ということが分かってきたからです。
さらには、ニューロダイバーシティといわれるような、脳や神経に由来する個人レベルでさまざまな特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、仕事に活かしていこうという考え方も広がってきています。
チームビルディングSSR理論でも、人材力で最初に整えるのは、自分やメンバーの脳の特性の違いが、仕事にどう影響を及ぼすか学ぶことです。
メンバーの脳の特性を理解する効果を簡単にまとめると次のものなどが挙げられます。
・適所適材:自らの脳の特性を識り、他のメンバーとの違いを理解すれば、チームのメンバーがどの場面で活躍できるか分かります。
・リーダーシップ:自らの強みをどのように使えば良いか分かるため、リーダーシップが磨かれます。
・心理的安全性の向上:人と人が違うことが当たり前と知ることが、心理的安全性の大前提です。
・創造的コミュニケーション:物事の捉え方の違いが理解できるため、創造的な対話によるコミュニケーションが可能になります。
私たちは、『効き脳診断』という脳の特性診断ツールを使って、人材力を高めています。
『効き脳診断』について詳しくはこちら
OKRを導入する(組織力)
チームビルディングSSR理論の組織力は、会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点をしっかりつくったうえで、メンバー1人ひとりが主体的に動き、かつチーム全体が一体となって相乗効果を生み出せるようにする力ですが、OKRはそれを体現するフレームワークです。
OKRは、GoogleやFacebook、メルカリをはじめ、多くの企業で採用されており、会社のビジョンに紐づいた目標を、社員全員で共有しています。
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
「目標(Objectives 以下O)」と、その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定して、企業が目指すべき目標⇔チームに求める目標⇔個人一人ひとりの目標をツリー状にリンクさせることにより、会社の目標と個人の目標のベクトルをそろえます。
OKRを導入して高い目標を設定すれば、社員が育ち、部門間の協力体制が進みます。
組織の目標が個人の目標に紐づいているため、会社のビジョンが浸透します。
個人の働きが、会社やチームの役に立っていることが分かるのでエンゲージメントが向上します。
高い目標を設定して挑戦するほうが、結果として成果が高いことが調査からも分かっています。
OKRを導入して、チームの組織力を高めましょう。
中小企業のOKR導入について詳しくはこちらをご覧ください
コーチングを学び1on1ミーティングを導入する(関係力)
1on1ミーティングは、上司が部下の成長や目標達成を支援する部下との面談です。
多くの中小企業で導入されている1on1ミーティングに必要なのは、コーチングのスキルです。
コーチングスキルが不足していると、上司が自らのアドバイスを押し付けてしまったり、通常の業務の進捗確認に終始したりと、部下の成長や目標達成する支援を行えません。
1on1ミーティングでは、部下が設定した目標の達成を上司が支援するため、上司の役割は部下の成長や課題解決を適切に支援することです。
1on1ミーティングを継続的に行うと、上司と部下の信頼関係が向上し、部下の成長を支援することができるようになります。
また、上司と部下との双方向コミュニケーションで、チームの問題解決力も向上します。
1on1ミーティングに必要なコーチングスキルとして、「傾聴」「承認」「質問のスキル」「フィードバック」「ティーチング」「アサーション」などのスキルが挙げられます。
1on1に必要なスキルを教育し、効果的な1on1を行いましょう。
1on1について詳しくはこちらもご覧ください
チームビルディングを行ううえでの注意点
タックマンモデルを意識する
タックマンモデルとは、組織の成長段階を示すモデルです。
チームが結成された後、対立などの混乱期を経て、チームがだんだん機能していく様を5つの発展段階に分けて説明しています。
その5つとは、形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期です。
タックマンモデルを知ることで、チームの状態に応じて正しい対策を行うことができるようになります。
形成期(Forming)
形成期は、チームが新たに結成された段階です。
メンバーがお互いのスキルや価値観を十分理解しておらず、チームの目標や役割に対する理解も浅いため、メンバーの中には不安や緊張感が生じます。
踏み込んだコミュニケーションが起こらないため、チームとして目標に向かって活動はできていません。
リーダーは、チームの方向性を明確にし、チーム全体の成功イメージの共有を図りながら、メンバーの目標達成に向けた動機づけを促進します。
混乱期(Storming)
チームの目標が共有されてくると、チームは目標達成に向けて活動を始めます。
しかし、メンバーの業務の進め方や価値観が異なるため、なかなかうまくいきません。
上手くいかないと犯人探しが始まるなど、チーム内に軋轢や衝突が起こります。
そうすると、チームの雰囲気がどんどん悪くなっていきます。
こんなとき、リーダーに必要なことは、メンバーを信頼して、チーム成功の全体ビジョンを示し続けることです。
統一期(Norming)
混乱期にお互いが意見をぶつけ合っていくうちに、だんだんお互いのことが分かってきます。
チームの目標や成功ビジョンの共有も進んでいくため、その目標に対するメンバーの役割分担が明確になってきます。
メンバーの信頼関係が深まり、目標達成に向けて対話ができるようになり、チーム全体の生産性が向上します。
業務の進捗スピードが上がるため、リーダーは、チームが目標達成に向けて正しく進んでいるか確認し、早期に軌道修正する役割が求められます。
機能期(Performing)
機能期は、チームが成熟し、各メンバーが自己の役割を把握し、他のメンバーと協力して成果をあげていく時期です。
この段階になると、メンバーはお互いの個性を尊重しながら相乗効果を発揮するように行動するようになります。
チームの目標達成が見えてくるので、ますますモチベーションが上がります。
リーダーが果たす役割は、相対的に低くなります。
散会期(Adjourning)
散会期は、一定期間の到達や目標の達成によってチームが解散する時期のことです。
これまでの経験を通じて、メンバーそれぞれがスキルや強みを見つけて、次のステージに進むタイミングとなります。
散会期には、これまでの成果と評価の確認を行い、次のキャリアで活かせるようにします。
リーダーは、メンバーに対してフィードバックを行うことで、部下の学習を促進します。
経営者も変わる必要がある
チームビルディングは組織のマネジメントを変える取組です。
つまり、組織のソフトウェアのアップデートです。
しかし、どれだけ性能の素晴らしいソフトウェアを導入しても、CPUやメモリが旧式だと性能を十分引き出せないのと同じように、チームビルディングを導入して組織の働き方が変わっても、経営者層が変わらなければ成果が上がらないだけでなく、社員満足度の低下など社内の混乱につながります。
従業員の働き方を変えるためには、自らのマネジメントもそれに合わせてアップデートする必要があります。
チームのレベルに応じた取り組みをする
先にも述べましたが、チームの3つの力(SSR)のうち、どこが弱いのかを把握して、それを補う継続的な取り組みを行わないと、チームビルディングの取組はうまくいきません。
チームビルディングSSR理論の3つの要素には、それぞれレベルがあり、いきなり上位のレベルを満たしにいっても、土台がしっかりしていないため、その打ち手は効果があがりません。
組織のレベルは、「個人」、「チーム」「会社全体」の階層レベルに区分され、それぞれが「人材力」「組織力」「関係力」と有機的に結びついており、それぞれの結びつきが強化されると組織の実力が上がっていくのです。
どの階層レベルの、どの要素が弱いのかを把握してチームビルディングに取組む必要があります。
組織の力の現状を調査して、組織改善に活かす手法として『サーベイ・フィードバック』があります。
組織の現状を正しく把握して、効果的な打ち手をうちましょう。
従業員一人ひとりに組織理論に基づいた調査を行い、組織の現状を把握するのが、組織診断『ソコアゲ』です。
組織診断『ソコアゲ』について詳しくはこちらもご覧ください。
ゲームを活用したチービルディング研修例
チームビルディングを学ぶために様々な研修がありますが、中小企業が研修を実施する場合には、ゲームを使った研修が効果的です。
ゲームによってチームの課題が明確になるため、参加者が自然と主体的に学ぶことができます。
ゲームを使った研修には、
・参加者が自然と主体性を発揮して学ぶため、研修効果が持続しやすい。
・同じゲームでも、チームのレベルやテーマ別に研修ができる。
・周りと協力しないとゴールできないため、自然とチームビルディングが学べる。
といった効果があります。
ここでは、チームビルディング研修に最適なゲームについて、簡単なルールと狙い・効果を解説します。
ヘリウムリング
ルール
ヘリウムリングは、チームメンバー全員でそれぞれ指1本でフラフープを運ぶシンプルなゲームです。
スタート地点に置かれたフープを持ち上げて、ゴール地点まで運ぶ時間を争います。
ただし、ゲーム上次の制限が課されます。
・持ち上げる際は全員が指1本で下から持ち上げる。
・持ち上げるときは、指の腹ではなく指の背を使う。
・誰か一人でもフープから指が離れたたらスタート地点に戻る。
狙い・効果
老若男女どんな人でも気軽に参加できるゲームで、チーム全体のまとまり度合、一体感が試されます。
チームビルディングができていないチームは、犯人捜しが始まったり、声の大きい人が一方的に仕切ってやり方をコロコロと変えるため、一向に先に進まないということが起こります。
一方、チームビルディングが進んでいるチームは、「次はこうしてみよう!」と、みんなで意見を出し合いながらゲームに挑んでいきます。
こういった過程を体験することで、成果を出せるチームはどういうチームかを実感できるようになっています。
最後に振り返りシートを使って話し合いを行います。
振り返りをすることで、チームで成果をだすために日頃どんなことを意識する必要があるかを自分たちで考え、翌日からの仕事につなげられるようになります。
効き脳研修「旅のしおり」
ルール
事前に脳の特性診断『効き脳診断』を行ったうえで、特性が同じグループで固まって着席します。
そのうえで、簡単な「旅のしおり」を作ってもらいます。
自分が貰って嬉しい旅のしおりを作るという制限を設けます。
狙い・効果
同じ指示書により作業をしたにも関わらず、各テーブルの制作物が大幅に異なります。
各テーブルでどのような傾向の旅のしおりが制作されるか全体で共有することで、効き脳の違いによる行動の違いに気づき、その後の学習効果が高まります。
メンバーの違いを知り、仕事の任せ方を考えるワークを通じ、エンゲージメントの向上や適所適材を図れるようになります。
チームビルディング中学校
ルール
チームビルディング中学校は、チームで協力して正解を導くカードゲームです。
メンバーそれぞれに別の情報が記載された情報カードが渡され、それぞれの情報を共有してゴールに導きます。
狙い・効果
ゲームをクリアできたか否かに関わらず、チームの強みと課題が可視化されます。
例えば、
・チームで協力せず、ひとりで正解を導こうとする。
・アイデアを思いついているのに言わない。
・チーム全体が役割分担せず、同じ作業をしている。
といった課題が、ゲームを通じて浮き彫りになります。
最後に振り返りシートを使って振り返りを行うことで、その課題をメンバー全員が他人事ではなく、自分事として捉えるようになり、チームの行動の改善につながります。
研修を通じて、リーダーシップの向上や、部署間を超えたコミュニケーションの重要性を学びます。
部長ゲーム
ルール
部長ゲームは、それぞれの役割に与えられた指示書に従って答えを導き出すゲームです。
誰がどのような情報を持っているかを、ルールに従って情報を共有し、指示書に示された課題を時間内にクリアすることを目指します。
ゲームには次のルールが適用されます。
・ゲーム中は会話禁止
・コミュニケーションは「伝達用紙」のみ。
・情報の伝達は直接の上司・部下のみ可能。
狙い・効果
会社の指示系統と同じシチュエーションを再現してコミュニケーションを取るゲームを通じて、日常の仕事の報連相の仕方や、仕事への取り組み方が可視化できるようになっています。
そのため、普段の仕事の進め方や課題が明確になります。
それらの課題をどうすれば解決できるのか、振り返りの時間を使って話し合うことで、コミュニケーションの改善やリーダーシップ向上が図れます。
その他のゲーム研修
チームビルディングを学ぶゲーム研修は、ここまで紹介した以外にも様々な内容の研修があります。
そのほかの研修について詳しくはこちらもご参照ください。
ここまで紹介したゲーム研修についてもより詳しく説明がされています。
まとめ
チームビルディングは強みを活かし、経営目標を達成する組織を創る取り組みです。
チームビルディングを行うポイントは、SSR理論を意識して、弱いところを補うような打ち手を打つことです。
中小企業の場合は、人と人の違いを『効き脳診断』等を通じて理解し、OKRで会社の目標と個人の目標を繋げたうえで、上司が1on1で部下の成長と課題解決を支援する取り組みを始めることで、チームビルディングが行えます。
OKRの高い目標(組織力)を目指して、上司が部下に適所適材で仕事を割り振り(人材力)、部下の課題に対して1on1で成長と課題解決を支援していきます(関係力)。
中小企業では、マネジメント研修が不足していることも多いため、必要なチームマネジメント研修を行い、マネジメントスキルを同時に向上させましょう。
チームビルディングに関する取組や教育を通じて、組織の目標を達成するために、人の違いを活かすことを意識してコミュニケーションを取っていけば、心理的安全性の高い組織を創ることができます。
組織共通の目標に対して、言うべきことを言える組織が、成果をあげることができるのです。