心理的安全性の高め方|具体的な取組みや注意するポイントを解説します。
先生!
最近、社内のコミュニケーションについて悩んでいまして。。
ふむ。。。
具体的にどんなことで悩んでいるのかね?
上司と部下のホウレンソウがうまく機能しておらず、顧客トラブルや、製造トラブルが頻発しています。
社員同士の関係性も悪くて、離職者も増えています。。。
なるほど。。。
職場に心理的安全性がない状態ですね。
心理的安全性が低い状態では、チームもうまく機能しないですからね。
心理的安全性ですか。。。
聞いたことはあるのですが、分かるようで、よく分からないのですよね。。。
心理的安全性を高めることが、これからの時代に求められています。
ただ、外国から入ってきた概念なので、
具体的な取り組みが分からない。
取り組んでみてもうまくいかない。
ということが起こりがちですね。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、
ハーバード大学で組織行動学を研究する
エイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した
「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」の日本語訳です。
エドモンドソン教授は、この心理的安全性を
「チームメンバーが恐怖や不安を感じずに自由に発言したり、行動できる状態」
と定義しています。
心理的安全性が高い組織では、
安心して発言できる文化が出来ているため、
現場の問題解決力が高くなり、
チームの生産性が高まります。
心理的安全性が注目されるようになったのは
次の二つの理由があります。
心理的安全性が注目される背景
心理的安全性が求められる時代背景
現代の経営をとりまく外部環境は、
俗にVUCAの時代と言われるように
時代の変化のスピードが速く、
ものごとが複雑で不確実な時代です。
また、内部環境も、
グローバル化の進展で
様々な国籍や文化の人と働く機会が多くなっています。
さらに、
Z世代と旧世代の価値観の違いが浮き彫りになり、
コロナ禍以降のテレワークの対応など
これまで日本で成功してきたコミュニケーションでは
成果を上げることが難しくなっています。
Google社の研究発表
心理的安全性が注目されるきっかけとなったのが、
Googleが、パフォーマンスの高いチームについて、
「プロジェクト・アリストテレス」という研究を行い、
その結果が大々的に報道されたことです。
Googleの研究により、
高いパフォーマンスを発揮しているチームは
以下の5つの要件を
満たしていることが報告されたのです。
①心理的安全性
「無知、無能、ネガティブ、邪魔だ
と思われる可能性のある行動をしても、
このチームなら大丈夫だ」と信じられる状態
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#identify-dynamics-of-effective-teams
変わったアイデアも否定されることがなく、
失敗があった場合でも建設的に乗り越えられる。
②相互信頼
メンバーの能力を信頼している状態
そのため、問題が起きたときは
「ヒト」ではなく「しくみ」を責める。
③構造と明確さ
会社の目標から求められる
チームの目的・目標・計画が明確で、
個人の役割がチーム内で共有されている。
④仕事の意味
メンバーが、
自分にとって意味がある仕事を
選択できていると感じている。
⑤インパクト
会社の目標や社会に対して、
意義のある仕事をしていると思える。
実感を得るためには、
自分の仕事が組織の目標達成に貢献していることを、
把握できるしくみが必要。
最終的にプロジェクト・アリストテレスは、
上記5つの要因が機能する土台となるのが、
①の心理的安全性であると結論付けました。
因みに、アリストテレスは、
古代ギリシャの哲学者で、
「全体は部分の総和に勝る」
という言葉を遺しています。
Googleは、
「仕事はチームでしたほうがパフォーマンスが高い」
と考えている様子がうかがえます。
この研究報告が知れ渡るにつれ、
心理的安全性が
多くの企業から注目されるようになりました。
日本で心理的安全性が課題となる理由
日本人の性質
心理的安全性はアメリカ発の概念であり、
これからの時代に目指すべき組織概念です。
しかし、
この概念をそのまま日本で導入しても
うまく行かないことがあります。
日本は一般的に
同調圧力の高い社会性を有していると言われます。
義務教育段階から、
集団行動を取る訓練を積み重ね、
協調できない子は問題児扱いされてきました。
すこし前にはKY(空気読めない)
という言葉が流行語になったこともあります。
日本では、
全てを表現せず、
奥ゆかしさを残した所作が美しいとされてきたこともあり、
相手の気持ちを推し量ったり、
周りと異なった行動をしないことが重視されてきました。
組織においてもそれは同じで、
「あうんの呼吸」や
「出る杭は打たれる」という言葉が象徴するように、
同調圧力からはみ出るような言動は、
組織のなかでは敬遠されてきました。
組織の心理的安全性を高めるためには、
「出る杭がどんどん出る」組織文化を育む必要があります。
そのために重要なのが、
個人の才能の違いを正しく把握することです。
才能の違いを正しく把握するためには、
特性診断を行う必要があるのですが、
日本の組織では、
特性診断を行っているのは、
大企業を中心に一部の企業に限られています。
心理的安全性を高めに行くから上手くいかない
心理的安全性は概念的なものであるため、
具体的に何から取りかかれば良いか分からない。
という難しさがあります。
そもそも、心理的安全性が高い組織というと、
仲が良いチームと誤解されることが良くあります。
チームで仕事をする上で
相手との信頼関係を損なわないことは重要ですが、
心理的安全性を誤解している「快適なチーム」では、
お互いの顔色をうかがって失敗やミスがあっても指摘せず、
重要な会議でも発言しない(出る杭にならない)
といったことが起こります。
そういった組織文化を持つ企業は、
時代の変化に対応できずに、
徐々に衰退していきます。
なぜ心理的安全性を高めるかといえば
変化の速い時代の中で企業が成長していくために、
現場の生産性を高めるためです。
現場の生産性を高めるためには、
現場に高い目標や、
その目標を実現する責任を課す必要があります。
チームのメンバーの目標や役割が明確になっており、
チームの目標を達成するために、
言うべきことを言うから、
否定も排除もされないのです。
次に、
心理的安全性が概念的なものであるがゆえに、
具体的に何から手をつけたら良いか分からない
という難しさがあります。
高い目標を達成するためには、
会社全体の目標に対するチームの役割や目標が明確で、
チームのメンバーがお互いを信頼して仕事を任せる必要があります。
また、高い目標を目指せば自ずと、
仕事に対する意義を感じることができます。
仕事に求める欲求は人それぞれですが、
それぞれの違いを認める組織でなければ人は辞めていきます。
これらの因子のベースとなると言われているのが、
心理的安全性という概念です。
心理的安全性を高めるポイント
心理的安全性を高めるうえで着目すべきは、
効果的なチームの5因子がどのレベルにあるか?
を診ることです。
前述のとおり心理的安全性は、
効果的なチームの他の4因子の必要十分条件です。
逆説的に捉えると、
他の4因子が高いレベルにあれば、
心理的安全性も高いレベルにあると言えます。
心理的安全性という概念を高めようとすると、
何から手をつければよいか分かりにくいですが、
他の4つの因子を高めるための施策であれば、
具体的な取り組みが見えてきます。
心理的安全性を高めるためには、
会社の掲げる高い目標を実現するために、
4つの因子のうち弱いものから順に強化し、
4つの因子すべてを上げていく取り組みが必要です。
心理的安全性を高めるための具体的な取組み
Googleが心理的安全性を高めるために取組んでいること。
Google社では、最高の上司を、
「自分で成果を上げるのではなく、
部下が最大の成果を上げるための場づくりができる人材」
と定めています。
そのような上司をつくるために、
次のようなしくみを導入しています。
・独自の組織サーベイを行う
・パフォーマンスを最大限発揮させるために個人診断を行う。
・会社のビジョンや目標と個人を紐づけるOKRを行う
・上司と部下の相互信頼を高める1on1を行う
・賞賛しあう文化をつくるピア・ボーナスを行う
そのしくみの具体的な内容や、
実現を手助けするツールを紹介します。
定期的に組織サーベイを行う
組織サーベイとは、
組織の現状を全体的に把握する広範囲の調査です。
組織サーベイを行って、
相互信頼・構造の明確さ・仕事の意義・インパクトの
4因子のうち弱いものを把握し、
弱いものから改善する取り組みを行っていけば
心理的安全性は高まっていきます。
エドモンドソン教授の質問で調べる
心理的安全性の生みの親であるエドモンドソン教授は、
チームの心理的安全性のレベルを図る7つの質問を考案し、
論文で発表しています。
以下の質問に5段階で点数をつけて、
組織の心理的安全性のレベルを継続的に計測し、
チームの心理的安全性が高まっているかを調べましょう。
1. このチームの中でミスをしたら、たいてい非難される。
2. このチームでは、メンバーがいつでも課題や問題を指摘しあえる。
3. このチームのメンバーは、自分と異なる考え方ややり方を認めない。
4. このチームでは、安心してリスクを取りチャレンジすることができる。
5. このチームでは、他者に助けや支援を求めにくい。
6. このチームには、自分の努力や成果を故意におとしめるような人はいない。
7. このチームで仕事をするとき、
自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
Googleでは、
専属のリサーチチームが、
リーダーに対して匿名化した集計結果を渡し、
心理的安全性を高めるためのヒントを提供しています。
組織診断「ソコアゲ」で調べる
Googleでは、
心理的安全性の向上の責任を負うのは、
それぞれのチームのリーダーであることがうかがえます。
一方で、一般的な中小企業では、
どこにどのような打ち手をうてば、
心理的安全性に関する課題を解決できるかの
具体的解決策を示せるリーダーは多くありません。
通常の組織サーベイでは、
組織の課題を把握するために行いますが、
その原因や解決方法まで特定できません。
私たちが提供する組織診断「ソコアゲ」は、
「いつ」「どの順番で」「どこの部署に」
「どのような打ち手」を打てば課題が解決できるのか?
を調べることが可能な組織診断です。
組織診断「ソコアゲ」について詳しくはこちら
組織診断「ソコアゲ」で、
定期的に組織の状態を把握し、
そのタイミングに必要な打ち手をうちましょう。
個人の強みを診断し、チームで共有する
日本で心理的安全性が高まらないのは、
個人の特性を正しく把握しないからです。
孫子も
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
「敵を知らずとも、己を知れば勝負は五分五分」
「敵を知らず、己も知らざれば、戦うごとに必ず危うし」
と言っています。
日本の組織は「毎戦必ず危し」の状態で戦っているのです。
一方、欧米の組織では、
診断により個人の特性を把握することは、
当たり前のように行われています。
当たり前すぎるがゆえに、
海外の組織マネジメントが紹介されるときに、
その取り組みが紹介されていません。
人と人の違いを正しく分かりあえば、
なぜ自分と違う発言をするかの理由が分かります。
人と人の違いを共有して初めて、
メンバーに「相互信頼」が生まれて、
言いたいことを安心して言える文化が育まれるのです。
また、高いパフォーマンスを発揮するためには、
なるべく得意な仕事を任せる必要があります。
得意なことを任せられていると感じられることで、
チームのメンバーは、
「仕事の意味」や「インパクト」を感じることができます。
私たちは、
チームで人と人の違いを把握するのに、
「効き脳診断」という診断を活用しています。
効き脳診断のベースとなっているハーマン・モデルは、
50を超える博士論文でその有効性が確認されています。
ハーマンモデルは欧米の企業を中心に、
すでに200 万人以上の活用実績がありますが、
企業の現場では、
・コミュニケーションの促進・向上
・チームビルディング(創造性開発)
・採用や適材配置
・個人のスキルアップやキャリア開発
・顧客への提案力(営業力)強化
といった目的で活用されています。
効き脳診断についてはこちらもご覧ください。
OKRを導入する
OKRとは、
「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」
の略称です。
人の特性がそれぞれ違うため、
各自がそれぞれの価値観で発言をしたら、
誰かが我慢をする状況が生まれます。
それは、
言いたいことを言い合える状態ではありません。
組織の「目標と計画や、
その中で果たすべき役割が明確」になって、
組織の中に議論の基準ができるのです。
OKRは、
組織のビジョンや目的・目標と、
個人の目標を繋げる組織マネジメントです。
組織のビジョンや目標をベースに対話をするから、
意見が異なる人々がそれぞれの意見をぶつけ合っても、
我慢や否定が起こらないのです。
また、
OKRでは挑戦的な目標を掲げることが推奨されています。
挑戦的な目標に挑むことは、
「失敗を許容する文化」をつくり
メンバーが「自分の仕事に意義がある」
と感じることにつながります。
OKRについて詳しくはこちらもご覧ください。
OKRで必要なコミュニケーションを取る
OKRは、
メンバー1人1人の目標を、
組織のビジョンや目標と紐づけ、
それを組織で実現する組織マネジメントです。
組織で目標を実現するために、
OKRでは次のことに取り組みます。
1on1に取組む
Googleでは、
1on1を2週間に1回行っているようです。
2週間に1回
その期間の業務の振り返りを行い、
次の期間の目標とアクションの確認を行います。
1on1は、
上司が部下の育成や、
モチベーション向上を目的として、
定期的・継続的に行う個人面談です。
1on1という仕組みを継続的に運用することで、
上司と部下の信頼関係を築きながら、
部下が成長して成果を上げることを支援します。
1on1についてくわしくはこちら
コーチングの技術を教育する
人と人は違うので、
それぞれコミュニケーションスタイルが異なります。
それらのメンバーが集まって、
成果を上げるコミュニケーションを取るためには、
共通のコミュニケーションの型を身につける必要があります。
1on1を運用するのに必要なコミュニケーションの型が、
コーチングの技術です。
「お互いが言いたいことを言い合える関係性を築く」
ために学ぶべきコーチングの技術としては、
・傾聴
・承認
・GLOWモデル
・フィードバック
・アサーション
などが挙げられます。
ウィンセッションなどを行う
ウィンセッションは、
OKRのチーム内で成果を確認するだけでなく、
感謝やポジティブな感情を共有して一体感を高めるとともに、
失敗や発見をシェアして、
メンバーの成長を促すOKRイベントです。
一週間の成果や学んだことを言語化することで、
メンバーの成長を支援し、
その過程や努力もねぎらうことで、
「相互信頼」や「仕事の意義」への理解を深めます。
ウィンセッションは、
チームにおいて成果を確認し、
お互いを賞賛するイベントであるが、
チームを超えて感謝の言葉を伝えることができません。
チームや部門を超えて、
感謝の言葉を伝えるために、
Googleではピア・ボーナスを導入しています。
心理的安全性を高める取組の効果
心理的安全性が高まると、
次のような効果が期待できるため、
メンバーの創造的な協業が促進され、
組織のパフォーマンスが向上します。
ミスへの寛容性が高まる
特性診断で各自の得意なこと・苦手なことが分かると、
他者の失敗に対して寛容になります。
また、
OKRが推奨する挑戦的な目標に挑めば、
もともと失敗を織り込んでいるため、
失敗よりも挑戦が賞賛されるとともに、
目標を達成するば大きな成果が得られます。
心理的安全性が高まれば、
離職率が低下し、
高い組織パフォーマンスを維持することができます。
コミュニケーションの改善
人と人の違いを理解していると、
発言の違いが起こる理由が分かるため、
意見の対立は起こりにくくなります。
OKRでチームの目標や役割を共有すれば、
一貫性のあるコミュニケーションを取ることができます。
1on1で継続的に面談を行えば、
上司と部下の信頼関係が増し、
アサーティブな対話を行うことができます。
コーチングの技術を使って対話を行えば、
お互いの違いを活かして創造的な解決策が生まれます。
心理的安全性が高まると、
コミュニケーションの質が向上し、
現場の課題解決力が高まります。
創造性の促進
OKRは現状の延長線上にない、
挑戦的な目標を掲げるので、
創造的なイノベーションを促進する必要があります。
心理的安全性がある環境では、
メンバーは自由にアイデアを出し合うことができるので、
創造的なアイデアで課題を解決するようになります。
メンバーの成長と学習
OKRで高い目標に挑むために、
メンバーには成長が求められます。
継続的な1on1で、
上司は部下の成長と学習を支援します。
心理的安全性が高い環境では、
部下は安心して失敗し、
失敗から学んで成長する機会を得ます。
まとめ
心理的安全性とは、
チームメンバーが恐怖や不安を感じずに、
自由に発言したり、行動できる状態のことを言い、
Googleの調査で、
組織の生産性を高める重要な要素であると分かっています。
アメリカから入ってきた概念なので、
日本の組織で心理的安全性を高めるためには、
今までと異なったマネジメントを取り入れ、
新たに学習をする必要があります。
心理的安全性を高める取り組みを行って、
生産性の高いチームを作ることが、
不確実で変化の速い現代社会で企業が生き残るための
唯一の組織の方針であると言えます。